毎年行われている診療報酬改定の協議ではタスク・シフティングがよく取り上げられています。タスク・シフティングとは医療スタッフが行っているタスクを他の人に任せることでタスク量を減らし、過重労働になっている状況を軽減することを指します。本来、専門職として医療に関わる専門業務に特化しているべき医療スタッフから誰でもできるようなタスクを取り去り、代わりに担当する補助職を置くというのが基本的なやり方です。タスク・シフティングでは医師の負担軽減が注目されることが多くなっているため、看護師の労働環境は変わらないのではないかと思う人もいるでしょう。しかし、医師の負担軽減が看護師のタスクを減らすことにもつながります。 この理由を理解するには具体的な例を見てみるのが良いでしょう。例えば、医師事務作業補助体制加算は医師の事務作業を補助するための人員を置くことによって診療報酬の大きな加算があります。医師の書類作業が負担になっていることが着目され、専門の事務補助職を付けて補助体制が整っていることを示すと加算してもらえる仕組みが作られているのです。現実的には医師が看護師に任せて書類を作成させている現場が多く、医師よりもむしろ看護師のタスクが減る仕組みになっています。このように医師の仕事は看護師が代わりにやっていることがしばしばあるので、医師の負担を軽減することを目的とした診療報酬改定は、看護師の負荷を減らすことにもつながるのです。